基本的な SIP コールフローとトラブルシューティングコマンドに関するドキュメント

CscTsWebDocs · ‎2014-07-02

このドキュメントは英語版の日本語訳です。最新の内容は英語版をご参照ください。

はじめに

このドキュメントでは、PBX、ゲートウェイ、および SIP 電話機間の基本的なSIP コールフローについて詳しく説明します。このドキュメントの目的は、初心者がさまざまな SIP コールフローとメッセージを理解できるようにすることです。このドキュメントではまた、SIP トラブルシューティングコマンドについても説明します。

前提条件

SIP プロトコルとコールフローメッセージに関する基本的な知識。

コールフローの例

1. PBX と Cisco SIP IP Phone 間のコールフロー — 正常なセットアップと切断

次の図は、ゲートウェイから Cisco SIP IP Phone への正常なコールセットアップと切断を示しています。このシナリオでは、エンドユーザはユーザ A とユーザ B の 2 人です。ユーザ A は PBX A 側に位置します。PBX A は、T1/E1 によって SIP ゲートウェイ 1 に接続されています。ユーザ B は Cisco SIP IP Phone 側に位置します。ゲートウェイ 1 は、IP ネットワークを介して Cisco SIP IP Phone に接続します。

コールフローは次のとおりです。

1. ユーザ A がユーザ B にコールを発信します。

2. ユーザ B がコールに応答します。

3. ユーザ B がコールを切断します。

ステップ	アクション	説明
1.	コールセットアップ：PBX A からゲートウェイ 1 へ	コールセットアップが PBX　A とゲートウェイ 1 との間で開始されます。コールセットアップには、ユーザ A がユーザ B にコールを発信しようとしたときに行われる標準トランザクションが含まれています。
2.	INVITE：ゲートウェイ 1 から Cisco SIP IP Phone へ	ゲートウェイ 1 は、SIP URL 電話番号をダイヤルピアにマップします。ダイヤルピアには、宛先となる SIP 対応エンティティの IP アドレスとポート番号が含まれています。ゲートウェイ 1 は、ダイヤルピア（このシナリオでは Cisco SIP IP Phone）として受け取ったアドレスに SIP INVITE 要求を送信します。 INVITE 要求の内容は次のとおりです。 Cisco SIP IP Phone の IP アドレスが Request-URI フィールドに挿入されます。 PBX A は、コールセッションの開始側として From フィールドに指定されます。固有の数値 ID がコールに割り当てられ、Call-ID フィールドに挿入されます。 1 つのコールレッグ内のトランザクション番号が CSeq フィールドに指定されます。ユーザ A が受信可能なメディア機能が指定されます。ゲートウェイが RTP データを受信できるポートが指定されます。
3.	Call Proceeding：ゲートウェイ 1 から PBX A へ	ゲートウェイ 1 は、PBX A に Call Proceeding メッセージを送信し、コールセットアップ要求を受信したという確認応答を行います。
4.	100 Trying：Cisco SIP IP Phone からゲートウェイ 1 へ	Cisco SIP IP Phone は、ゲートウェイ 1 に SIP 100 Trying 応答を送信します。100 Trying 応答は、INVITE 要求が Cisco SIP IP Phone によって受信されたことを示します。
5.	180 Ringing：Cisco SIP IP Phone からゲートウェイ 1 へ	Cisco SIP IP Phone は、ゲートウェイ 1 に SIP 180 Ringing 応答を送信します。180 Ringing 応答は、ユーザの呼び出しが開始されたことを示します。
6.	Alerting：ゲートウェイ 1 から PBX A へ	ゲートウェイ 1 は、ユーザ A に Alert メッセージを送信します。Alert メッセージは、ゲートウェイ 1 が Cisco SIP IP Phone から 180 Ringing 応答を受信したことを示します。ユーザ A には、ユーザ B を呼び出し中であることを示すリングバックトーンが聞こえます。
7.	200 OK：Cisco SIP IP Phone からゲートウェイ 1 へ	Cisco SIP IP Phone は、ゲートウェイ 1 に SIP 200 OK 応答を送信します。200 OK 応答は、接続が確立したことをゲートウェイ 1 に通知します。
8.	Connect：ゲートウェイ 1 から PBX A へ	ゲートウェイ 1 は、PBX A に Connect メッセージを送信します。Connect メッセージは、接続が確立したことを PBX A に通知します。
9.	Connect ACK：PBX A からゲートウェイ 1 へ	PBX A は、ゲートウェイ 1 の Connect メッセージを受信したという確認応答を行います。
10.	ACK：ゲートウェイ 1 から Cisco SIP IP Phone へ	ゲートウェイ 1 は、Cisco SIP IP Phone に SIP ACK を送信します。ACK は、ゲートウェイ 1 が 200 OK 応答を受信したことを示します。これで、コールセッションがアクティブになります。
11.	BYE：Cisco SIP IP Phone からゲートウェイ 1 へ	User B が自分の Cisco SIP IP Phone でコールセッションを終了し、Cisco SIP IP Phone がゲートウェイ 1 に SIP BYE 要求を送信します。BYE 要求は、ユーザ B がコールを解放しようとしていることを示します。
12.	Disconnect：ゲートウェイ 1 から PBX A へ	ゲートウェイ 1 は、PBX A に Disconnect メッセージを送信します。
13.	Release：PBX A からゲートウェイ 1 へ	PBX A は、ゲートウェイ 1 に Release メッセージを送信します。
14.	200 OK：ゲートウェイ 1 から Cisco SIP IP Phone へ	ゲートウェイ 1 は、Cisco SIP IP Phone に SIP 200 OK 応答を送信します。200 OK 応答は、ゲートウェイ 1 が BYE 要求を受信したことを Cisco SIP IP Phone に通知します。
15.	Release Complete：ゲートウェイ 1 から PBX A へ	ゲートウェイ 1 が PBX A に Release Complete メッセージを送信すると、コールセッションが終了します。

2.ゲートウェイと Cisco SIP IP Phone 間のコールフロー — 正常なコールセットアップとコール保留

次の図は、ゲートウェイから Cisco SIP IP Phone への正常なコールセットアップとコール保留を示しています。このシナリオでは、エンドユーザはユーザ A とユーザ B の 2 人です。ユーザ A は PBX A 側に位置します。PBX A は、T1/E1 によって SIP ゲートウェイ 1 に接続されています。ユーザ B は Cisco SIP IP Phone 側に位置します。ゲートウェイ 1 は、IP ネットワークを介して Cisco SIP IP Phone に接続します。

コールフローは次のとおりです。

1. ユーザ A がユーザ B にコールを発信します。

2. ユーザ B がコールに応答します。

3. ユーザ B がユーザ A を保留にします。

4. ユーザ B がユーザ A の保留を解除します。

ステップ	アクション	説明
1.	コールセットアップ：PBX A からゲートウェイ 1 へ	コールセットアップが PBX　A とゲートウェイ 1 との間で開始されます。コールセットアップには、ユーザ A がユーザ B にコールを発信しようとしたときに行われる標準トランザクションが含まれています。
2.	INVITE：ゲートウェイ 1 から Cisco SIP IP Phone へ	ゲートウェイ 1 は、SIP URL 電話番号をダイヤルピアにマップします。ダイヤルピアには、宛先となる SIP 対応エンティティの IP アドレスとポート番号が含まれています。ゲートウェイ 1 は、ダイヤルピア（このシナリオでは Cisco SIP IP Phone）として受け取ったアドレスに SIP INVITE 要求を送信します。 INVITE 要求の内容は次のとおりです。 Cisco SIP IP Phone の IP アドレスが Request-URI フィールドに挿入されます。 PBX A は、コールセッションの開始側として From フィールドに指定されます。固有の数値 ID がコールに割り当てられ、Call-ID フィールドに挿入されます。 1 つのコールレッグ内のトランザクション番号が CSeq フィールドに指定されます。ユーザ A が受信可能なメディア機能が指定されます。ゲートウェイが RTP データを受信できるポートが指定されます。
3.	Call Proceeding：ゲートウェイ 1 から PBX A へ	ゲートウェイ 1 は、PBX A に Call Proceeding メッセージを送信し、コールセットアップ要求を受信したという確認応答を行います。
4.	100 Trying：Cisco SIP IP Phone からゲートウェイ 1 へ	Cisco SIP IP Phone は、ゲートウェイ 1 に SIP 100 Trying 応答を送信します。100 Trying 応答は、INVITE 要求が Cisco SIP IP Phone によって受信されたことを示します。
5.	180 Ringing：Cisco SIP IP Phone からゲートウェイ 1 へ	Cisco SIP IP Phone は、ゲートウェイ 1 に SIP 180 Ringing 応答を送信します。180 Ringing 応答は、ユーザの呼び出しが開始されたことを示します。
6.	Alerting：ゲートウェイ 1 から PBX A へ	ゲートウェイ 1 は、ユーザ A に Alert メッセージを送信します。Alert メッセージは、ゲートウェイ 1 が Cisco SIP IP Phone から 180 Ringing 応答を受信したことを示します。ユーザ A には、ユーザ B を呼び出し中であることを示すリングバックトーンが聞こえます。
7.	200 OK：Cisco SIP IP Phone からゲートウェイ 1 へ	Cisco SIP IP Phone は、ゲートウェイ 1 に SIP 200 OK 応答を送信します。200 OK 応答は、接続が確立したことをゲートウェイ 1 に通知します。
8.	Connect：ゲートウェイ 1 から PBX A へ	ゲートウェイ 1 は、PBX A に Connect メッセージを送信します。Connect メッセージは、接続が確立したことを PBX A に通知します。
9.	ACK：ゲートウェイ 1 から Cisco SIP IP Phone へ	ゲートウェイ 1 は、Cisco SIP IP Phone に SIP ACK を送信します。ACK は、ユーザ A が 200 OK 応答を受信したことを示します。これで、コールセッションがアクティブになります。
10.	Connect ACK：PBX A からゲートウェイ 1 へ	PBX A は、ゲートウェイ 1 の Connect メッセージを受信したという確認応答を行います。
11.	INVITE：Cisco SIP IP Phone からゲートウェイ 1 へ	ユーザ B がユーザ A を保留にします。Cisco SIP IP Phone は、ゲートウェイ 1 に SIP INVITE 要求を送信します。
12.	200 OK：ゲートウェイ 1 から Cisco SIP IP Phone へ	ゲートウェイ 1 は、Cisco SIP IP Phone に SIP 200 OK 応答を送信します。200 OK 応答は、INVITE 要求が正常に処理されたことを Cisco SIP IP Phone に通知します。
13.	ACK：Cisco SIP IP Phone からゲートウェイ 1 へ	Cisco SIP IP Phone は、ゲートウェイ 1 に SIP ACK を送信します。ACK は、Cisco SIP IP Phone が 200 OK 応答を受信したことを示します。これで、コールセッションが一時的に非アクティブになります。RTP パケットは送信されません。
14.	INVITE：Cisco SIP IP Phone からゲートウェイ 1 へ	ユーザ B がユーザ A の保留を解除します。Cisco SIP IP Phone は、ゲートウェイ 1 に SIP INVITE 要求を送信します。
15.	200 OK：ゲートウェイ 1 から Cisco SIP IP Phone へ	ゲートウェイ 1 は、Cisco SIP IP Phone に SIP 200 OK 応答を送信します。200 OK 応答は、INVITE 要求が正常に処理されたことを Cisco SIP IP Phone に通知します。
16.	ACK：Cisco SIP IP Phone からゲートウェイ 1 へ	Cisco SIP IP Phone は、ゲートウェイ 1 に SIP ACK を送信します。ACK は、Cisco SIP IP Phone が 200 OK 応答を受信したことを示します。これで、コールセッションがアクティブになります。

3. Cisco SIP IP Phone と Cisco SIP IP Phone 間の単純なコール保留のコールフロー

次の図は、一方の参加者がもう一方を保留にした後、そのコールを再開する場合の Cisco SIP IP Phone 間の正常なコールを示しています。このコールフローシナリオでは、エンドユーザはユーザ A とユーザ B の 2 人です。ユーザ A とユーザ B はどちらも Cisco SIP IP Phone を使用しています。これらの Cisco SIP IP Phone は IP ネットワーク経由で接続されます。

コールフローシナリオは次のとおりです。

1. ユーザ A がユーザ B にコールを発信します。

2. ユーザ B がコールに応答します。

3. ユーザ B がユーザ A を保留にします。

4. ユーザ B がユーザ A の保留を解除します。

5. コールが続行します。

ステップ	アクション	説明
1.	INVITE：Cisco SIP IP Phone A から Cisco SIP IP Phone B へ	Cisco SIP IP Phone A は、Cisco SIP IP Phone B に SIP INVITE 要求を送信します。INVITE 要求は、コールセッションに参加するようユーザ B に求める招待です。 INVITE 要求の内容は次のとおりです。ユーザ B の電話番号が SIP URL の形式で Request-URI フィールドに挿入されます。SIP URL は、ユーザ B のアドレスを指定し、E メールアドレスのような形式を取ります（user@host、user は電話番号、host はドメイン名または数値で表現されるネットワークアドレスのいずれかです）。たとえば、ユーザ B への INVITE 要求の Request-URI フィールドは「INVITE sip:555-0002@companyb.com; user=phone」と表示されます。「user=phone」パラメータは、Request-URI アドレスはユーザ名ではなく電話番号であることを示します。 Cisco SIP IP Phone A は、コールセッションの開始側として From フィールドに指定されます。固有の数値 ID がコールに割り当てられ、Call-ID フィールドに挿入されます。 1 つのコールレッグ内のトランザクション番号が CSeq フィールドに指定されます。ユーザ A が受信可能なメディア機能が指定されます。
2.	180 Ringing：Cisco SIP IP Phone B から Cisco SIP IP Phone A へ	Cisco SIP IP Phone B は、Cisco SIP IP Phone A に SIP 180 Ringing 応答を送信します。
3.	200 OK：Cisco SIP IP Phone B から Cisco SIP IP Phone A へ	Cisco SIP IP Phone B は、Cisco SIP IP Phone A に SIP 200 OK 応答を送信します。200 OK 応答は、接続が確立したことを Cisco SIP IP phone A に通知します。 Cisco SIP IP Phone B は、Cisco SIP IP Phone A によって送信された INVITE メッセージでアドバタイズされたメディア機能をサポートしている場合は、Cisco SIP IP Phone A と共通するメディア機能を 200 OK 応答でアドバタイズします。Cisco SIP IP Phone A によってアドバタイズされたメディア機能をサポートしていない場合は、304 Warning ヘッダーフィールド付きの 400 Bad Request 応答を送り返します。
4.	ACK：Cisco SIP IP Phone A から Cisco SIP IP Phone B へ	Cisco SIP IP Phone A は、Cisco SIP IP Phone B に SIP ACK を送信します。ACK は、Cisco SIP IP Phone A が Cisco SIP IP Phone B から 200 OK 応答を受信したことを示します。 ACK には、Cisco SIP IP Phone B によって使用される最終セッション記述を含むメッセージボディが含まれている場合があります。ACK のメッセージボディが空の場合、Cisco SIP IP Phone B は INVITE 要求のセッション記述を使用します。
Cisco SIP IP Phone A と Cisco SIP IP Phone B の間に双方向の RTP チャネルが確立されます。
5.	INVITE：Cisco SIP IP Phone B から Cisco SIP IP Phone A へ	Cisco SIP IP Phone B は、コールを保留にするために使用される新しいセッション記述プロトコル（SDP）セッションパラメータ（IP アドレス）を含む通話中（mid-call）INVITE を Cisco SIP IP Phone A に送信します。 Call_ID=1 SDP: c=IN IP4 0.0.0.0 SIP INVITE の c= SDP フィールドには、0.0.0.0 が含まれています。これはコールを保留にします。
6.	200 OK：Cisco SIP IP Phone A から Cisco SIP IP Phone B へ	Cisco SIP IP Phone A は、Cisco SIP IP Phone B に SIP 200 OK 応答を送信します。
7.	ACK：Cisco SIP IP Phone B から Cisco SIP IP Phone A へ	Cisco SIP IP Phone B は、Cisco SIP IP Phone A に SIP ACK を送信します。ACK は、Cisco SIP IP Phone B が Cisco SIP IP Phone A から 200 OK 応答を受信したことを示します。
Cisco SIP IP Phone A と Cisco SIP IP Phone B の間の RTP チャネルが切断されます。
8.	INVITE：Cisco SIP IP Phone B から Cisco SIP IP Phone A へ	Cisco SIP IP Phone B は、前の INVITE と同じコール ID を持ち、コールを再確立するために使用される新しい SDP セッションパラメータ（IP アドレス）を含む通話中（mid-call）INVITE を Cisco SIP IP Phone A に送信します。 Call_ID=1 SDP: c=IN IP4 181.23.250.2 Phone A と Phone B の間のコールを再確立するために、Phone B の IP アドレスが c= SDP フィールドに挿入されます。
9.	200 OK：Cisco SIP IP Phone A から Cisco SIP IP Phone B へ	Cisco SIP IP Phone A は、Cisco SIP IP Phone B に SIP 200 OK 応答を送信します。
10.	ACK：Cisco SIP IP Phone B から Cisco SIP IP Phone A へ	Cisco SIP IP Phone B は、Cisco SIP IP Phone A に SIP ACK を送信します。ACK は、Cisco SIP IP Phone B が Cisco SIP IP Phone A から 200 OK 応答を受信したことを示します。
IP Phone A と IP Phone B の間に双方向の RTP チャネルが再確立されます。

Cisco Unified Communications Manager での SIP ポートの定義

SIP のトラブルシューティング

Unified Communications Manager で RTMT を使用して UC Manager の SIP トレースを確認します。
"debug ccsip calls"
"debug ccsip all"
"debug ccsip error"
"debug ccsip events"
"debug ccsip messages"
"debug ccsip states"
"show sip-ua call"
- SIP コールのアクティブな UAC とユーザエージェントサーバ（UAS）に関する情報を表示します。
"show call active voice brief"
- 進行中のボイスコールまたはファックス伝送に関するアクティブなコール情報を表示します。

MTP 設定を確認します。
- MTP はアーリーオファーに必要です。
- MTP は補助サービスを提供するために古いバージョンの UC Manager で必要です。
レイヤー 2 およびレイヤー 3 の変数を確認します。

SIP トレースについて

SIP トレースの詳細については、次のページを参照してください。

UNDERSTANDING SIP TRACES