はじめに
Voice GW の動作検証テストを実施する際、 実際に接続する設備(ISDN網、PBX装置等)が
準備できない場合があります。
その際、簡単な動作確認テストであれば、Voice GW間をバックツーバックで接続する方法で
代用することができます。
本ドキュメントでは、Voice GW を BRI 回線でバックツーバック接続する方法を
解説します。
(備考:相互接続性に関する厳密なテストでは、実網・実機が必要です。)
1.ケーブルの準備
VoiceGW間をバックツーバック接続する場合、クロスケーブルを
使用します。BRI クロスケーブルの配線は以下の通りです。
(市販のケーブルが入手できない場合、RJ45コネクタ、かしめ(圧着工具)
等を用いて自作できます。)
2.クロック同期
BRI のデジタルインタフェースでは、クロック同期方向を考慮する必要があります。
また、ISDNインタフェースを接続する場合、一方をネットワーク側、他方をユーザ側
のプロトコルに設定する必要があります。
一般的には、ネットワーク側インタフェース(Master)からユーザ側インタフェース(Slave)
の方向にクロックを提供します。
3.設定内容
以下に ISR G2 と ISR 4K シリーズの設定例 (ネットワーク側、ユーザー側) を示します。
設定例1: ISR G2 のバックツーバック接続
(ISDN:ネットワーク側)
network-clock-participate wic 1 ! interface BRI0/1/0 no ip address isdn switch-type basic-net3 isdn protocol-emulate network isdn layer1-emulate network isdn skipsend-idverify |
(ISDN:ユーザ側)
network-clock-participate wic 1 network-clock-select 1 BRI0/1/0 ! interface BRI0/1/0 no ip address isdn switch-type basic-net3 isdn point-to-point-setup |
設定例2: ISR 4K のバックツーバック接続
(ISDN: ネットワーク側)
interface BRI0/1/0:0 isdn switch-type basic-net3 isdn protocol-emulate network isdn layer1-emulate network isdn incoming-voice voice isdn skipsend-idverify |
(ISDN:ユーザー側)
interface BRI0/2/0:0 isdn switch-type basic-net3 isdn point-to-point-setup isdn incoming-voice voice |
備考:ISR 4K の BRI インタフェースカードは、backplane とクロックを
同期する機能がありません。そのため、ISR 4K の PRI インタフェースで
使用する、network-clock participation slot / subslot、
network-clock input-source priority controller [t1|e1] slot/bay/port
等のコマンドは使用しません。
4.設定上の制約事項
BRI インタフェースには、下記のような制約事項があるので、
検証テストの際には注意が必要です。
- VoIP プロトコルに MGCP を使用する場合、NTT仕様の設定
(isdn switch-type ntt) は使用できません。
-ネットワーク側の BRI インタフェースでは、 NTT仕様の設定は
使用できません。
また、ISR4K シリーズの Voice GW を使用する場合、
以下の制約事項があります。
- ISR 4K の BRI インタフェースカードは、backplane と クロックを
同期することができません。ネットワーク側として動作する場合、
インタフェースカードの内部クロックが使用されます。
- ISR 4K の BRI インタフェースは、現時点では NTT仕様の設定を
サポートしていません。(ISDN ユーザ側でも使用できません。)
これらの制約事項のため、上述のバックツーバックの設定例では、
isdn switch-type basic-net3 の設定を使用しています。
まとめ
BRI クロスケーブルを準備すれば、バックツーバック接続の構成を容易に
構築できます。
VoIPプロトコル、dial-peerの設定を適切に組み合わせれば、様々なシステムの
検証に利用できます。
参考ドキュメント
Cisco ISR シリーズのクロックの設定と動作 (ISR G2)
ISR 4K シリーズの T1/PRI 回線の同期設計について
"ISR 4K の BRI インタフェースは、現時点では NTT仕様の設定を
サポートしていません。(ISDN ユーザ側でも使用できません。)"
の記載に関して、27-JUL-2017にリリースされたIOS XE Everest 16.6.1以降で、
ネットワーク側でもユーザ側でもサポートされるようになったという認識で良いでしょうか?
こんにちは
ISR G2 でも ISR 4K (16.6.1 以降)でも、NTT BRI がサポートされるのはユーザ側のみとなります。
よろしくお願いします。
返信ありがとうございます、NTT BRIはユーザ側のみということで承知しました。
今回の例のように、バックツーバック接続でISRに"ISDN:ネットワーク側"の設定を行うのは、
あくまでも簡易的な確認の為であり、お客様環境での設定はサポート外という認識で合っていますでしょうか?
本ドキュメントの例は basic-net3 となります。ネットワーク側の BRI インターフェイスでは、NTT 仕様の設定は未サポートです。
承知しました、ご返信ありがとうございました。