はじめに
Network Services Orchestrator (NSO)の使用形態（インストール方法）には、以下の二種類があります。
| ローカルインストール | 主に検証、開発用。複数のインスタンスを作成し、切り替える事も可能 |
| システムインストール | 主に運用環境用。一つの Linux システムで、一つのインスタンスを使用 |
ローカルインストール では全てのファイルが、特定のディレクトリ以下に展開されます。サーバ起動・終了は、ncs コマンドを使用した、手動でのものとなり、検証や開発に使用されます。
一方、運用環境ではシステムインストールを使用し、NSO サーバの起動・終了は各 Linuxディストリビューションに依存した、service や systemctl コマンド等の、サービス管理ツールを使用します。各種設定ファイルは、/etc 以下に配置されるなど、一般的なサーバアプリケーションと同様のレイアウトとなります。
また、ファイルの配置場所以外にも、インストール時のデフォルト値が大きく違いますので、注意が必要です。
インストールイメージについて
Network Services Orchestrator (NSO) は、単体のファイルで提供されます。
ファイル名の例: nso-4.2.1.linux.x86_64.signed.bin
これ自体は、バイナリデータが添付されたシェルスクリプトとなっており、以下のように展開し、インストーラを取り出します。この過程で、添付されている証明書を使用して、ファイルの署名確認も行われます。
root@linux:~# sh nso-4.2.1.linux.x86_64.signed.bin
Unpacking...
Verifying installer signature...
Downloading CA certificate from http://www.cisco.com/security/pki/certs/crcam2.cer ...
Successfully downloaded and verified crcam2.cer.
Downloading SubCA certificate from http://www.cisco.com/security/pki/certs/innerspace.cer ...
Successfully downloaded and verified innerspace.cer.
Successfully verified root, subca and end-entity certificate chain.
Successfully fetched a public key from tailf.cer.
Successfully verified the signature of nso-4.2.1.linux.x86_64.installer.bin using tailf.cer
root@linux:~#
取り出しされた nso-4.2.1.linux.x86_64.installer.bin がインストーラです。バイナリファイルが添付されたシェルスクリプトとなっており、同様に実行することで、NSOがインストールされます。
インストールの実際
インストールは、上記で取り出したインストーラを使用して行います。
与えるオプションによりその方法が変わりますので、それぞれ説明をします。
また、--help をオプションとして起動することで、以下のようなヘルプ表示を行いますので、参考にして下さい。
root@linux:~# sh nso-4.2.1.linux.x86_64.installer.bin --help
This is the NCS installation script.
Usage: nso-4.2.1.linux.x86_64.installer.bin [--local-install] LocalInstallDir
Installs NCS in the LocalInstallDir directory only.
This is convenient for test and development purposes.
Usage: nso-4.2.1.linux.x86_64.installer.bin --system-install [--install-dir InstallDir]
[--config-dir ConfigDir] [--run-dir RunDir] [--log-dir LogDir]
[--run-as-user User] [--non-interactive]
...
ローカルインストール
--local-install を使用すると、ローカルインストールされます。デフォルト動作となっており、明示的にこのオプションを指定しない場合は、ローカルインストールとなります。
以下の例では、カレントディレクトリに nso-4.2.1 というディレクトリを作成し、その配下に全てのファイルを展開・インストールしています。
root@linux:~# sh nso-4.2.1.linux.x86_64.installer.bin nso-4.2.1
INFO Using temporary directory /tmp/ncs_installer.20755 to stage NCS installation bundle
INFO Unpacked ncs-4.2.1 in /root/nso-4.2.1
INFO Found and unpacked corresponding DOCUMENTATION_PACKAGE
INFO Found and unpacked corresponding EXAMPLE_PACKAGE
INFO Generating default SSH hostkey (this may take some time)
INFO SSH hostkey generated
INFO Environment set-up generated in /root/nso-4.2.1/ncsrc
INFO NCS installation script finished
INFO Found and unpacked corresponding NETSIM_PACKAGE
INFO NCS installation complete
root@linux:~#
ディレクトリ名を変更することで、複数インストールすることも可能です。
システムインストール
--system-install を指定することで、システムインストールを行います。--help の出力で示される様に、デフォルトインストール先ディレクトリに、内容別にファイルが展開・インストールされます。
Does a system install of NCS, suitable for deployment.
Static files are installed in InstallDir/ncs-<vsn>.
The first time --system-install is used, the ConfigDir,
RunDir, and LogDir directories are also created and
populated for config files, run-time state files, and log files,
respectively, and an init script for start of NCS at system boot
and user profile scripts are installed. Defaults are:
InstallDir - /opt/ncs
ConfigDir - /etc/ncs
RunDir - /var/opt/ncs
LogDir - /var/log/ncs
各ディレクトリは、以下の用途で使用されます。
| | 環境変数 | パス | 用途 |
| InstallDir | NCS_DIR | /opt/ncs | NSO 本体 |
| ConfigDir | NCS_CONFIG_DIR | /etc/ncs | ncs.conf, ssl 証明書, ssh 鍵、等 |
| RunDir | NCS_RUN_DIR | /var/opt/ncs | packages 等、各インスタンスについてのファイル |
| LogDir | NCS_LOG_DIR | /var/log/ncs | ログファイル |
また、使用している Linux Distribution での方法で、rc スクリプトが作成され、サービスとして登録されます。この結果、service ncs start や、systemctl start ncs といった方法で、サーバの起動・停止を行うことが出来ます。
サーバ起動・終了
NSOの起動方法は、上記で説明したインストール方法によって違います。また、ローカルインストールを行った場合は、インスタンスが作成されていないため、まずはそれを作成する必要があります。作成方法については、こちらをご参照下さい。
ローカルインストール
ローカルインストールを行った場合は、インスタンスのディレクトリ(RUN_DIR)がありませんので、ncs-setup コマンドで新規に作成します。
以下の例では、カレントディレクトリに ncs-run ディレクトリが作成されます。
$ ncs-setup --dest ./ncs-run
違うディレクトリ名とすることで、複数のインスタンスを作成することが出来ます。ただし、同時に起動することは出来ませんので、ご注意下さい。
インスタンスのディレクトリ（ncs-run等）へ cd コマンドで移動した後、以下のように ncs コマンドから起動して下さい。
$ cd ncs-run
$ ls -la
total 40
drwxr-xr-x 11 root root 374 Oct 1 10:00 .
drwxr-xr-x 9 root root 306 Oct 1 15:10 ..
-rw-r--r-- 1 root root 623 Oct 1 23:49 README.ncs
-rw-r--r-- 1 root root 1128 Oct 1 23:49 README.netsim
drwxr-xr-x 22 root root 748 Oct 1 15:09 logs
drwxr-xr-x 6 root root 204 Oct 1 15:09 ncs-cdb
-rw-r--r-- 1 root root 8235 Oct 1 10:00 ncs.conf
drwxr-xr-x 5 root root 170 Oct 1 23:49 packages
drwxr-xr-x 4 root root 136 Oct 1 23:49 scripts
drwxr-xr-x 14 root root 476 Oct 1 15:09 state
drwxr-xr-x 3 root root 102 Oct 1 23:49 target
$ ncs
$
問題がなければ、起動後は何も表示せず、プロンプトに戻ります。
NSOを終了する場合は、以下のコマンドを実行して下さい。
$ ncs --stop
システムインストール
実際のコマンドは、ディストリビューションによって違います。
Ubuntu / Debian 系
起動
$ service ncs start
終了
$ service ncs stop
Redhat / CentOS v7 以降等
起動
$ systemctl start ncs
終了
$ systemctl stop ncs
デフォルト値について
NSO の各種動作パラメータは、ncs.conf ファイル内に記述され、起動時に有効となります。ローカルインストール、システムインストール共に、ncs.conf が生成され、配置されますが、その内容には違いがあります。
基本的に、ローカルインストールで作成される ncs.conf には、多くのデバッグ用設定が含まれます。何かの問題が発生し、それに対するトラブルシュートを行う場合、これらの設定が必要となります。
一方、システムインストールでは、それらデバッグ用の設定ではなく、出力ログレベル等が低い状態の運用環境向けの ncs.conf が生成されます。デバッグ情報の出力には、CPUやディスクスペースを使用するため、ローカルインストールで作成された ncs.conf をそのまま使用することは、大きなリスクとなります。この点に、注意してください。
ライセンス登録
NSO 4.2 以降では、スマートライセンスの登録が必要となります。登録されるまで、90日間はEvaluationモードで動作します。詳細については、こちらをご確認ください。
NSO: ライセンス、及びスマートライセンスの有効化
CLIの表示
NSO にとって、CLIは一つの入力方法に過ぎません。Northbound接続として、NETCONF、REST、JSON-RPC等によっても、CLIと同様の結果を得ることが可能です。
CLIを起動するには、以下のコマンドを使用します。
$ ncs_cli
多くのオプションが存在しますが、以下のオプションが多く使われます。
NSO に登録されているユーザ、admin を使用し、Cisco スタイルのプロンプトを使用します。（-C をつけない場合は、Juniper スタイルとなります）
$ ncs_cli -u admin -C
admin connected from 10.1.1.1 using ssh on linux
admin@ncs#
