大崎 秀行 (Hideyuki Osaki) さんは、シスコのエンタープライズ領域において、製品開発のアセスメントからコンセプト設計、ユーザーエクスペリエンスの最終形に至るまで、プロダクトサポートの観点から全体を俯瞰しながら現場のリアリティと日々向き合い続けています。シニアレベルのテクニカルエバンジェリストとしても活躍するマルチタレントで、2025 年の Events Top Contributor に選出され、Japan のコミュニティを牽引するリーダーでもあります。
「伝えるとは何か」というコミュニケーションの本質への静かな問いを持ち続け、常に自身を問い直すその姿勢が、圧倒的な安定感と信頼感へと昇華されています。その自己形成は、まるで自らの思考に OS を実装していくような深いプロセスです。
今回のインタビューでは、そんな大崎さんの内なる静かな対話と “伝える・伝わる” 哲学、そしてその根源にある思考の形成プロセスに迫ります。

人物紹介
大崎 秀行 (Hideyuki Osaki)
CX Centers Japan 所属、ワイヤレスチームをリードするテクニカルリーダー。Enterprise 製品、特に Wireless 技術に関するあらゆるレベルの課題や業務を幅広くカバーする一方、社内向けトレーニング・サポート体制の開発および支援など、プロアクティブに Global との連携を図る。
水野 恵理 (Eri Mizuno)
シスココミュニティマネージャー。本編インタビューの聞き手。
Global でもわずか 19 名という極めて名誉ある受賞者リストに何度も名を連ねる大崎さん。ウェビナーでのこだわり、日々の学び、そして今後のビジョンについてお話を伺いたいと思います。
※ 2025 年のイベント トップコントリビューターをご紹介します!
自己紹介
水野:
大崎さん、こんにちは。今日はお忙しい中ありがとうございます。このたびはイベントトップコントリビューターのご受賞おめでとうございます。まずは、現在のお仕事と専門分野についてご紹介いただけますか?そして今回のインタビューにあたっての率直なお気持ちもぜひお聞かせください。
大崎:
こんにちは。 大崎 秀行 (Hideyuki Osaki) です。CX Centers Japan(TAC)でワイヤレスチームのテクニカルリーダーを務め、エンタープライズ向けのワイヤレスや Wi-Fi 技術を中心に幅広い課題解決や、社内外へのトレーニング、開発部門やグローバル TAC との連携にも積極的に取り組んでいます。本日はこの対話を通じて自身も新たな発見があれば良いなと思っており、お話しできることを楽しみにしています。みなさまにもシスコやその製品の魅力を感じていただければ嬉しいです。
受賞について
水野:
大崎さんは 今回で 3 度目の受賞ですね。2022 年に Japan での初受賞者となられたあと、2024-2025 年は連続受賞となりました。受賞の背景にはどのような努力があったとお考えですか?
大崎:
ありがとうございます。正直最初はこの賞の存在すら知らず(すみません笑)、連続受賞も意識していたわけではありません。ただ、自分がやってきたことが実績につながったことは素直にうれしいです。これ(受賞)についてはこれから水野さんが解説してくれるんですよね(笑)
水野:
もちろん!今日のこれからのインタビューの前提となる部分ですから。
(読者のみなさまは上記の音声自己紹介ファイルをご参照ください)
ウェビナー・コンテンツ作成へのこだわり
水野:
では早速ですが、ウェビナーのコンテンツ作成にあたり、特に大切にしていることや他のプレゼンターと異なる点、工夫していることなどがあれば教えてください。
大崎:
僕が主に担当しているのは技術セミナーですが、そのなかでも「分かりやすさ」と「内容の深さ」のバランスを大切にしています。まずは “分かりやすさ” を重視していますが、そればかりを追い求めると内容が薄くなってしまうのでそこはかなり気を付けています。資料作成では僕自身がビジュアル重視で理解するタイプなので、文字情報を少なめにするなど資料スライドのイメージや構成を工夫し、自分なりに体系化した内容を伝えることを意識しています。とはいえあとから学習できるように最低限の情報は文字として残します。
水野:
そうすることで参加者の直感的な理解を促すようにされているんですね。
大崎:
そうなんです。資料の内容については「自分の言葉で説明できる」ことを徹底し、自信をもってすべて伝えることができるように準備します。借り物の言葉は使いません。ソフトウェアの バグサーチツール の公式情報が曖昧な場合は、必要なら実機検証もして最新の情報に更新してからコンテンツに反映しセミナーに臨むようにして、細部にも手を抜かず事前準備を大切にしています。
あとはみなさんが眠くならないように(笑)話の流れに波を作るよう意識していますね。途中で難しい話をしたあとは全く違う視点の話題を入れてリフレッシュしてもらうなど、心理的なハードルを下げることも僕が常に意識しているポイントです。
水野:
そういえばセミナー中はよくみなさんに問いかけをしていますよね。でもちょっと気になったんですが、バグサーチツール の情報ってウェビナーコンテンツ資料全体からするとかなり小さなポーションではないですか?
大崎:
たしかにスライドの表の中の1行とかのレベルですね(笑)でも自分としては重要度は変わらないですよ!
信頼感の裏付け
水野:
大崎さんのセミナーに関して今日はこれ、どうしてもお聞きしたたかったことなんですが、参加者が思わず聞き入ってしまう Live セッションの秘訣について - 特に Q&A セッションパートはいつも圧巻で、カンペなしで 30 問(以上)に答え切ってしまうだけでなく、答えにくい質問にもきちんと向き合うところなどは見ていてとても清々しいです。意識的に行っていることはありますか?
大崎:
まず、コンテンツ作成の段階でプレゼンテーションのすべての内容は完璧に頭に入っていますから、関連する質問は何が来ても大丈夫です。だから信じて何でも質問してください(笑)
それから、一見答えにくいように見える質問でも、参加者のみなさんからの質問はすべてシスコへのフィードバックだと思っています。なので、自分がみなさんのためにこれからどう動けるか、どうすべきかをできるだけイメージして回答しています。何でも質問していただいて良いんですよ。
水野:
そうなんですね。今のお話しからの印象なんですけど、大崎さんって受け取った情報をすべて意味あるものとして捉えている気がします。つまりノイズフィルターがない、みたいな。
大崎:
ああ!それはあるかもしれない、というよりはそのとおりかな。よく見ているなあ(笑)
技術力・ナレッジの深さと日々の習慣
水野:
ありがとうございます。ところで大崎さんはご登壇いただいたウェビナーのどの回も技術力やナレッジの深さについて安定して高い評価を得ています。それらに結び付く知識などはどのように培ってきたのでしょうか。
大崎:
本当にみなさんからのポジティブなコメントに毎回パワーをいただいています。たまにお世辞なのでは?と思うこともありますけど(笑)
水野:
本当に嬉しいコメントが多いですよね。アンケートご協力者の個人情報は明かしませんから、みなさん率直なご意見だと思います。先ほどのコンテンツ作成のこだわりからも感じるところはありますが、今日は、大崎さんの専門性を支えている「いったい何食べてそうなったんでしょう?」的なことをお聞きできれば(笑)
大崎:
あはは(笑)それで言うと僕が「食べて」きたものは日々の業務で得られたものばかりなんです。
最近は特に緊急度や難易度の高い障害対応も増え、他部門と連携することが多いです。その中で細かい部分などが自然と身についてきました。それと最先端の技術開発部門やマーケティングチームと頻繁にやり取りする中で製品や会社のビジョンに触れたりしています。製品が何を意図して開発されたのか、その背景にある "Why?” が腹オチすると自分の中のエネルギーが自走し出すんです。これはたぶんみなさんも一緒ですよね。
製品開発の元になっているドキュメント(IEEE 802.11 や RFC などの標準文書、4000 ページ以上)も常に確認できるよう手元に保存しています。そうして技術的な数式なども理解・説明できるレベルまで落とし込んでいます。式の要素一つ一つが僕の脳内に訴えてくる、その意味するところを理解できると途端にそれが色彩を放ち、モーションを伴う絵が浮かぶんです。
水野:
常に知識の体系化とイメージ化、さらには脳内で VR 再生を同時に行っているんですね。それと、他部署と連携される中での気づきなどはありますか?
大崎:
役割やプロセスの間に生まれる“ポケット”みたいな、誰が担当するべきなのか明確じゃない部分を拾ってつなぐことも多いです。プロダクトデザイン側のビジョンと開発者の思いが食い違ったり、リリース後に思わぬ課題が発覚したり。そういうとき僕は必ず、「製品の本来の目的やビジョン」に立ち返ります。先ほどお話しした Why? の問いはここで活きてきます。エンジニアリングエンゲージメントの一環として、そういった新製品開発や改善にも深く関わっています。
水野:
全体を見てシークエンシャルに流れるよう調整する役割も担っているんですね。自然とそうなっているんでしょうか。
大崎:
基本的に「知りたい」「伝えたい」「守りたい」という 3 つの想いが根っこにあってそうなっている気がします。特に「知りたい」という気持ちについては全体のフレーム把握への欲求が強いので、自然と首を突っ込んでしまうのかもしれないですね(笑)
( #3-2 シスコ大崎さんにお話を伺いました!(後編) へ続く)
みなさま、こちらのインタビュー記事をお読みいただいてありがとうございます。
次回は #3-2 シスコ大崎さんにお話を伺いました!(後編)で大崎さんの “知りたい・伝えたい・守りたい” の原点と、困難に立ち向かう信念など、よりパーソナルな「価値観」に迫ります。お楽しみに!
このインタビューの全シリーズは以下よりお読みいただけます。
【予告編記事】イベントトップコントリビューター受賞者インタビューシリーズ(全 3 回)
【イベントトップコントリビューター インタビューシリーズ #1】 シスコ佐藤さんにお話を伺いました!
【イベントトップコントリビューター インタビューシリーズ #2】 シスコ箕浦さんにお話を伺いました!
【イベントトップコントリビューター インタビューシリーズ #3-1】 シスコ大崎さんにお話を伺いました!
【イベントトップコントリビューター インタビューシリーズ #3-2】 シスコ大崎さんにお話を伺いました!
エピローグ - インタビューシリーズの終わりに - 感謝と未来への期待