はじめに
USB(ユニバーサル・シリアル・バス)は、PCや周辺デバイスの業界標準のインタフェースとして普及しています。弊社のWebカメラ製品(Webex Desk Camera)やヘッドセット(有線モデル)も、USB インタフェースを介してPCと接続して使用します。
USBはPCや周辺デバイスへの給電(充電)の用途でも使用されますが、USB Power Delivery(USB PD)の規格では高出力化が進み、安全性の確保も必要になってきています。
最近のUSBケーブルではeMarkerというICチップ内蔵されるようになり、ケーブルの製造者情報や通電容量等の情報が登録され、事故の危険性を低減しています。
本ドキュメントでは、USB給電機能の拡張と eMarker の役割について解説します。
1.USB PD の給電能力について
eMarker無しの従来USB Type-Cでは、電流は 3A (アンペア) までに制限され最大供給電力は
15W (ワット) でしたが、eMarkerの使用により電流の上限は 5A になり、最大供給電力は
USB PD 3.0で100W、USB PD 3.1で240Wに拡張されました。

2.eMarker について
USBケーブルの eMarker IC チップには、製造者情報(Vender ID)、USB速度(Speed)、通電容量(Max Voltage、Max Current) 等の情報が登録されています。製造者情報(Vender ID)はケーブルの信頼性確認、通電容量は USB PDプロトコルで給電動作の制御に利用されます。

3.eMarker との通信について
eMarkerが内蔵されたケーブル(Electronically Marked Cable)がUSBデバイスに接続された場合、 Vconn信号線から給電が行われます。
USBデバイスがeMarkerを認識すると、SOP’ signaling(自分側のコネクタ内デバイスとのシグナリング)、SOP’’ signaling(相手側のコネクタ内デバイスとのシグナリング)により、eMarker の登録内容が読み取られます。その後、USBデバイス間で、SOP signaling(相手側のUSBデバイスとのシグナリング)による通信が行われます。電力供給する側(ソース)は、 ケーブルがサポートできる条件を参照して、電力消費する側(シンク)に Source Capabilities を送信します。 シンクは必要な電圧と電流を選択しソースにRequestを返し、USB PDによる電力供給が開始されます。

まとめ
最近のUSBケーブルではeMarkerというICチップ内蔵されるようになり、ケーブルの製造者情報や通電容量等の情報が登録されています。USB給電での事故を低減するためには、信頼できるベンダーのケーブルを使用することが推奨されます。
参考ドキュメント:
USB Power Delivery Specification
USB Power Delivery (USB Developer Days 2019)