ACIはコントローラであるAPICを通じてOpenStackなど様々な管理ツール等と連携しますが、中でもCisco UCS Directorは充実した連携機能を備えています。本ページでは、ACIに対してUCS Directorを連携させる基本的な手順と概要についてご紹介します。
APIC自身は基本的にはACI環境を統合管理するためのAPIのインターフェイスとしての役割であるため、ネットワークとしての管理連携は行ないますが、たとえば接続する仮想マシンのデプロイや構成変更、物理サーバの構成(Cisco UCSにおけるService Profileの作成など)、それらのリソースが必要とするストレージの構成などまではカバーしていません。インフラとしての統合管理と自動化を行うためには、APICおよび関連する各管理ポイント(UCS Manager, VMware vCenter, ストレージ管理ポイント等)に対して横断的に処理を実行させることが必要であり、UCS Directorはその役割を担います。
本ページでは、以下の構成を前提とします。
- UCS Director 5.2.0.1
- APIC 1.0(2m)
UCS Director における APIC の登録
UCS Directorは対応している各管理ポイントのIPアドレスおよびアカウント情報を定義するだけで、非常に簡単にデバイスを登録することが可能となっています。APICを登録するには、上部バーに表示されている[管理]プルダウンメニューから[物理アカウント] を選択し、[マルチドメインマネージャ]タブの画面で[追加]をクリックして登録を行います。

[アカウントの追加]メニューが表示されますので、[APIC]を選択します。

APICの登録に必要となる情報は以下の通りです。
- APIC登録名 (UCS Directorにおいて識別するための管理上の名前)
- 登録先PODの選択
- APIC IPアドレス
- ユーザ名 ※管理権限を持つアカウント
- パスワード

以下の様に"account added"と表示されれば、登録作業は完了です。

正常に登録が行えているか確認したい場合は、アカウントを選択し、右クリックメニューもしくは上部メニューから[テスト接続]を実施してください。

以下の様に"接続に成功しました"と表示されれば、アカウント情報を含めて接続構成は問題ありません。

アカウントを登録すると、自動的にインベントリ情報が収集され、登録されたAPICが管理するACIの構成情報をUCS Directorから確認することができるようになります。
UCS Director からの APIC 管理情報の把握
[統合基盤]では、アカウントを登録したPODの構成要素としてAPICが表示されます。APICは複数台でのクラスタ構成となるため、各クラスタノードをそれぞれ登録することも可能です。

APICをダブルクリックすると、さらに詳細情報を参照することが可能です。なお、これらの情報はメニューの[物理]プルダウンメニューから[ネットワーク]を選択し、[マルチドメインマネージャ] - [APIC Accounts]配下の各登録済APICを選択しても同じ情報を参照することができます。
UCS Director 5.2.0.1では、以下のACI管理情報を参照することができます。
- サマリー (ACIファブリックのSpine/Leafデバイス数、APIC基本情報など)
- ファブリックノード (APICおよびNexus9000のモデル名、シリアル番号、ノードID情報など)
- システム(APICおよびNexus9000のノード名、インバンドおよびアウトバンドの管理IPアドレスおよびMACアドレス、管理ID、シリアル番号など)
- ファブリックメンバーシップ (Spine/Leafスイッチのモデル情報など)
- 物理ドメイン (構成されている物理ドメイン情報、物理ドメインの追加・削除操作が可能)
- テナントのヘルス(テナント単位での健全性スコア)
- ノードのヘルス(Spine/Leafノード単位での健全性スコア)
- アクセスエンティティプロファイル
- リンクレベルポリシー
- VLANプール
- CDPインターフェイスポリシー
- LLDPインターフェイスポリシー
- リーフポリシーグループ
- テナント
- L3ドメイン
- VMネットワーキング
- L4-L7サービスデバイスタイプ
- ファブリックノードトポロジ
- L2ネイバー
- 導入済みサービスグラフ
- EPGからコントラクトの関連付け
- アクセスポートポリシーグループ
- ファブリックインターフェイスプロファイル
- ファブリックスイッチプロファイル

UCS Directorで提供されているワークフロー用ACI関連タスク
UCS Director は、APICの構成操作を行うワークフロー作成時に使用することができるタスクを標準で150個以上提供しています。これらを組み合わせることによって、UCS Directorではスクリプトやコマンド、フレームワーク開発などを行うことなくACI環境を制御するためのワークフローを構成することができます。
なお、ここで紹介しているタスクはあくまでも2015/3/1時点のものであり、バージョンアップなどに伴って拡張など変更される可能性があります。


※なお、ACIに関連するタスクはここで紹介した以外にも複合的なタスクとしていくつか用意されています。
これらのタスクを組み合わせることによって、APICに関連する操作と、それ以外の管理ツールに対する操作を組み合わせて横断的なワークフローを構成することが可能です。たとえば、以下の様なワークフローを簡単に構成することができます。
- 新規にEPGを作成しContractを構成・適用した上で、VMMドメイン連携を構成し、仮想マシンのネットワークアダプタをPort Groupに接続することによりEPGにリンクする
- EPGに対して物理ドメインを構成し、ベアメタルサーバをデプロイしてアタッチする
今後、実際のワークフローサンプルをいくつか紹介していきたいと思います。