2009年6月2日(初版)
TAC SR Collection |
主な問題 |
インラインパワーをサポートするクライアント機器(IP Phone、Aironet Access Point)を Catalyst IOS を搭載する Catalyst スイッチに接続した際に、Catalsyt のポートが ErrDisable になり、ネットワーク接続ができない可能性があります。これはインラインパワーをサポートするデバイスのハードウェア アーキテクチャ上の設計における仕様制限事項となります。
インラインパワー、外部電源に関わらず、PD での電源供給オン/オフ時に、Catalyst スイッチからキープアライブ パケット(※1)が送出されると、このキープアライブ パケットが PD のループバック状態によってループする場合があります。この際、Catalyst ではキープアライブがループしたことを検知し、このポートを Errdisable にします。この結果、ポートが使用できなくなるという事象が発生します(※2)。
(※1)
Catalyst IOS ではループを検出するためにキープアライブ パケットを送出します。
(※2)
古いバージョンの Catalyst IOS(12.1(13)Ea1 より以前のバージョン)では ループバックを検出してもポートを Errdisable の状態にしません。この場合ループを防ぐために、該当 VLAN の スパニングツリーを有効にする必要があります。スパニングツリーが有効な場合、Catalyst はセルフループを検出し、ポートはブロッキングステートになります。PD のループバック状態が解除された後、ポートはフォワーディングステートに遷移します。
背景:
インラインパワーをサポートするクライアント機器(Powered Device、以下 PD)と、Catalsyt3550PWR など、インラインパワーをサポートするサーバ機器(Power SourceEquipment、以下 PSE)では、Inline Power のサポートを検出する方法として、ケーブル接続時に以下のシークエンスを実施します。
・ 電源無供給時、PD は Tx Pair と Rx Pair をショートし、自身の Ethernet Port をループバック状態にします。
・ PSE はケーブル接続時に PD を検出するための信号を送出します。
・ この信号は接続先が電源無供給時の PD である場合、ループバックによって PSE に返ってきます。
・ 戻りの信号を検出すると PSE は接続先を PD と認識し、電源供給を開始します。
Catalyst スイッチではネットワークの不適切な状態を検知した場合に、ポートをダイナミックに閉じる機能が実装されています。ダイナミックに閉じられたポートは Errdisable という状態になります。2900/3500/3700 シリーズの Catalyst IOS では、12.1(13)Ea1 よりループバックを検出した際にポートを Errdisable に遷移させるよう、機能変更がなされました。
発生条件:
本事象は、以下の機器において発生する可能性があります。
Cisco IP Phone 79xx シリーズ、Cisco Aironet 1100 シリーズと Cisco Catalyst 2900/3500/3700 シリーズスイッチの組合せ
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解決策
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回避策として、以下の 4 つの方法があります。
1. ループバックを検出しても当該ポートが閉塞しないよう設定を行なう。
switch(config)#no errdisable detect cause loopback
(この設定を選択した際は、スパニングツリーを有効にしてください。)
2. Recovery Timeout 設定をする事で、一定時間経過の後、自動的に復旧させる。
switch(config)#errdisable recovery cause loopback
switch(config)#errdisable recovery interval [30-86400]
3. スイッチのキープアライブを disable する。
switch(config-if)#no keepalive
(ループバック状態が発生した際、このポートから送信された frame がループバックされ、他のポートで learn されている MAC address がこのポートで learn されてしまう可能性があります。)
4. IP Phone が電源 ON の状態でスイッチに接続する。
(この場合、接続時は Errdisable にならないと考えれますが、何らかの要因により電源が落ちた際に Errdisable になってしまいます。)
1 と 3 に関してはネットワークへの影響が考えられることから、2 の方法を推奨します。
本事象は、PD、PSE の動作上の相違やハードウェアチップの相違に依存するため、事象が発生する明確な条件や、Chassis/OS Version などの組合せに関しては、弊社内でも全て確認できていません。インラインパワー、外部電源の双方において、PD の電源供給時に生じうる事象ですので、上記の回避策より、ユーザ環境に最も適した方法を検討してください。
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備考
TechNews 2003 年 9 月号 No.0309-BA-00007