本稿ではISEのGUIを使ってEAP session resumeの概要を簡単に紹介します。弊社の旧製品であるACSでも機能はあり、元より弊社固有の機能ではありません。
ISEの設定箇所としては、Administration > System > Settings > Protocols配下のEAP FAST Settings/EAP-TLS/PEAP/EAP-TTLSです。
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EAP FAST Settings

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EAP-TLS

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PEAP

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EAP-TTLS

EAP Session ResumeといってもEAPの話ではなく、TLSレベルの話になります。
Session ResumeはSession Resumption, セッション再開等と言われます。
通常のSession ResumeはSession情報をサーバ側(ここではISE PSN)にキャッシュしておき、既存のSessionに関する接続リクエストが来た場合にTLSのnegotiationを簡略化します。これによって端末側では再接続の速度向上やサーバ側ではパフォーマンス向上/負荷低減が見込まれます。上の4つの絵の赤線のものになります。それぞれキャッシュしておく時間をSession Timeout値として設定可能です(Switch/FW等で設定するSession Timeoutとは全く別ものです)。サーバ側でSessionの情報を保持しておくという意味でStatefulなSession Resumeと言えます。
上の絵で一箇所青線となっている箇所がありますが、これはStatelessなSession Resumeとなっています。これはRFC5077(Transport Layer Security (TLS) Session Resumption without Server-Side State)にあるTLS Session Ticket extentionを使う方法になります。この場合、サーバ側に情報をキャッシュするのではなくその情報はSession Ticket内に保持され再接続時端末から提供されます。Session TicketであればDeployment内の他のPSNに再接続した場合も利用可能です。Stateless Session ResumeはEAP-TLSでのみ使用可能で有効にするには上記の絵以外のPolicy > Policy Elements > Results > Authentication > Allowed Protocolsの個々のServiceで

有効にする必要があります。
さらに上の絵で一箇所黄線となっているところがありますが、これはPEAPのFast Reconnectです。Session ResumeでTLSのnegotiationを簡略化するのに対し、Fast ReconnectはPEAPのTLS tunnel(Outer method)内を流れるMSCHAPv2等のinner methodを省略することでPEAPのやりとりを簡略化します。Windows等の端末側にも設定箇所があります。
上のEAP FAST SettingsにはPAC-less Session Resumeという表記があります。これはいわゆる通常のSession Resume(Stateful)であり、サーバ側で情報をキャッシュするものになります。
EAP-FASTでは通常PAC(Protected Access Credential/Protected Authentication Credential:本稿では詳細は割愛します)を使用します。EAP-TLSでStateless Session Resumeを有効にした設定箇所の下にEAP-FASTの設定箇所があり、

とStateless Session Resumeを有効にできます。Don't Use PACsにチェックが入っている場合上の絵の項目は表示されません。PACによってサーバ側に情報を持たせずに再接続を高速にするという意味でTLSのSession TicketとPACには類似性があると言えると思います。
Stateful/Stateless Session Resumeはスピードや負荷といった面で有効ではありますが、セキュリティの観点では非セキュアでは?という議論があります。両者はトレードオフの関係にあり、要件は利用者側のセキュリティポリシーによってきますので十分検討の上導入する必要があります。
Cisco Live: Advanced ISE Architect, Design and Scale ISE for your production networks - BRKSEC-3432 p.142-146