※ 2025 年 5 月 14 日現在の情報をもとに作成しています
1. はじめに
本記事では、Active Directory Integration の中核的な存在である AD Connector (AD コネクタ) の主な役割について解説します。
2. AD Connector の役割
Active Directory Integration における AD Connector の役割は主に以下の 3 つです。
- ドメイン コントローラから AD 情報を採取し、クラウド上の Umbrella に送る (下図の青線)
- ドメイン コントローラなどからログオン履歴を採取し、Virtual Appliance (仮想アプライアンス) に送る (下図の赤線)
- クラウド上の Umbrella と各種情報の受け渡しをする (下図の橙色の線)

※ Virtual Appliance を導入していない場合は、ログオン履歴の取得・送付 (赤い矢印) の通信は発生しません
それぞれのデータの詳細については以下の表のとおりです。
AD 情報 (青)
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AD Users、AD Computers のリストと AD Groups に所属している AD Users のリスト
この情報がクラウド上の Umbrella に送付されると、Umbrella Dashboard の「導入」>「コアアイデンティティ」>「ユーザとグループ」画面内の「Active Directory」に記録される
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ログオン履歴 (赤)
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ユーザーがドメイン環境にログオンした際に、ドメインコントローラ内のセキュリティ イベントログに記録されるユーザー情報 (ユーザー名およびドメイン コンピュータ名) と IP アドレスを紐づけた情報の一覧
Virtual Appliance は、ユーザーから DNS リクエストを受け取った際、パケットの送信元 IP アドレスとログオン履歴内の IP アドレスを照らし合わせて、通信を行ったユーザーを特定する
そして、DNS リクエスト内の EDNS0 領域にユーザー情報を付与して、Umbrella の DNS サーバー (208.67.222.222/208.67.220.220) に転送する
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各種情報 (橙)
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AD Connector からは AD Connector とドメインコントローラの現在のステータスなどが送られ、クラウド上の Umbrella サーバーからはアップデート情報などが送られる
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3. 通信に使われるポート
前述の 3 種類のデータの通信は以下の図で示すポート番号を通して行われます。

AD Connector はドメイン コントローラから TCP 636 を通してAD 情報を取得しており、通信には Kerberos または NTLM を使った LDAPS が用いられます。もし、ドメイン コントローラが LDAPS に対応しておらず、通信に失敗した場合は、LDAP による通信が TCP 389 を通して行われます。
また、AD Connector はドメイン コントローラから TCP 135+動的ポート (RPC/DCOM) を通してログオン情報を取得し、TCP 443 を通して HTTP (平文) で Virtual Appliance に送っています。なお、以下のサポート記事にあるとおり、この平文通信を暗号化する方法も用意されています。
Umbrella Virtual Appliance: Receiving user-IP mappings over a secure channel
https://support.umbrella.com/hc/en-us/articles/360036756651
AD Connector がクラウド側の Umbrella と各種情報を受け渡す際には TCP 443 HTTPS が使われます。
なお、上記以外にも AD Connector ではサーバー証明書関連の通信が行われます。詳しくは以下の公開文書をご参照ください。
(Virtual Appliance を使用している場合)
Identity Integrations - Active Directory Integration with the Virtual Appliances - Communication Flow and Troubleshooting
https://docs.umbrella.com/deployment-umbrella/docs/communication-flow-and-troubleshooting-1
(Virtual Appliance を使用していない場合)
Identity Integrations - Communication Flow and Troubleshooting
https://docs.umbrella.com/deployment-umbrella/docs/appx-a-communication-flow-and-troubleshooting
4. AD Connector のトラブルシューティング
これまでの項で、AD Connector の役割と実際に行っている通信の内容を見てきましたが、通信に失敗するなど、AD Connector の動作に問題が発生した場合は、以下の 2 つの情報を基にトラブルシューティングを行います。
- Umbrella Dashboard の「導入」>「設定」>「サイトとActive Directory」画面内の「ADコネクタ」のエントリーにあるステータス アイコンをクリックすると、AD Connector で現在発生しているエラーの概要が表示される
- AD Connector をインストールした端末内に保存されているログ ファイルに AD Connector の詳細な動作ログが記録される
C:\Program Files (x86)\Cisco\CiscoADConnector\<バージョン>\CiscoAuditClient.log
サポートエンジニアに AD Connector (または Active Directory Integration の動作全体) のトラブルシューティングを依頼する場合は、必ず Umbrella Dashboard 上のエラー内容と、上記のログ ファイルを提供してください。
なお、調査中にログ ファイルの内容を一旦クリアすることを求められた場合は、以下の手順で行ってください。
- Windows のサービス画面を開く
- 「Cisco AD Connector」を探し、右クリックして、「停止」を選択
- 上記のログ ファイルを削除
- 「Cisco AD Connector」を再度右クリックして、「開始」を選択
- 念のため、サービス起動後の処理が完全に行われるまで、5 分程度待つ
- ログ ファイルを提供する
How to Find and Submit Active Directory Connector Logs to Support
https://support.umbrella.com/hc/en-us/articles/230902468-How-to-Find-and-Submit-Active-Directory-Connector-Logs-to-Support