LISPをご紹介いたします。
LISPはLocator Identity Separation Protocolの略です。
ホスト(端末)がいるLANとISPが管理するようなWANとを別々のIPアドレスで構成しています。
ホストがWANのどこにいるかを紐づけた管理情報があります。
下記も合わせてご参照ください。
LISPの基本 その2:基本設定
LISPの基本 その3:トラブルシュートに使うコマンド
LISPの用語
LISPでは独特の用語が登場します。

EID (Endpoint Identifier)
ホストのIPアドレス。
RLOC (Routing Locator)
WANに面したLISPを有効のルータのIPアドレス。
ITR(Ingress Tunnel Router)
LANからWANへの入口ルータ。
EIDとRLOCの紐づけ(Mapping)を問い合わせます。(Map-Request)
LISPでカプセル化を行いWANへ送信します。
ETR(Egress Tunnel Router)
WANからLANへの出口ルータ。
EIDとRLOCのMappingをMap-serverに登録します。(Map-Register)
LISPのカプセル化を解除してLANへ送信します。
Map-Requestに応じてMap-Replyを返します。
xTR
ITR/ETRの両方の役割を担います。
基本的にITRとETRを分けることはなくxTRで運用されます。
LISP siteのエッジルータとなります。
MS/MRと同居可能です。
PxTR(Proxy xTR)
LISPサイトとnon-LISPサイト間の通信を担います。
LISPサイトとnon-LISPサイト間の通信はNATを利用することでも対応可能です。
ここでは取り上げません。
MS/MR(Map-Server/Map-Resolver)
MSとMRを別々の機器にすることも可能ではあります。
MSはMap-Registerを受信してEIDとRLOCのMappingを管理します。
MRはMap-Requestを受信してMSへ転送します。
EIDとRLOCのMapping
ここではノートPC側をITR、サーバ側をETRとします。
ETRからMS/MRへMap-Registerを送信しMS/MRにEIDとRLOCの紐づけを登録します。
MS/MRはEIDがどこのLISP site(RLOC)にあるのかを知っています。

①
ノートPCからサーバへ通信を行う際に、
ITRはサーバのIPアドレス(EID)がどこのETR(RLOC)にいるのかMap-RequestでMS/MRへ問い合わせをします。
ITRはキャッシュを持ちますので次回の通信ではMap-Requestしないこともあります。
②
MS/MRはITRからのMap-Requestを受けてサーバのEIDがいるETRへMap-Requestを送信します。
③
ETRはMS/MRからのMap-Requestを受信してITRへMap-Replyを送信します。
ITRはETRからのMap-Replyを受け取ってサーバがどこにいるのかを把握します。
ITRはサーバのEIDとRLOCのMappingを知りえることになります。
LISPパケットと通信
ITRは前述のように宛先のEIDがどのRLOCに紐づくかを把握します。
そのMappingに基づいてITRやETRは外側ヘッダやLISPヘッダをつけてカプセル化したり解除したりして通信します。

流れを簡単に見てみると下記のようになります。

ITRはノートPCからのサーバEID宛てパケットを受け取ります。
ITRはEIDとRLOCのMapping情報から外側のヘッダとLISPヘッダでカプセル化します。
青いRLOC網内は外側ヘッダのIPアドレスを使ってルーティングされます。
ETRにパケットが到着します。
ETRは到着後に外側ヘッダとLISPヘッダを解除します。
内側ヘッダのアドレスつまりはEIDでルーティングしてサーバに到着します。
詳しくはLISPのRFC6830をご参照頂くとよいでしょう。
パケットフォーマットも詳しく記載があります。
以上、その1でした。