はじめに
Voice GWにおいて音声コーデックの処理はDSPモジュール(PVDM: Packet Voice Digital Signal Processor Module) で行われます。
音声コーデックには、G.711、G.729A、G.729等の種類があり、1コールの処理に必要な
処理能力値(MIPS)は異なります。Voice GWにおいて、DSPの処理能力はCreditに換算して
計算され、コールによる負荷がDSPの処理性能の範囲内に収まるように管理されてます。
ここでは、Voice GWのDSPリソースのCreditの計算方法について説明します。
1.コーデックの分類
Voice GWにおいて、コーデックは処理の複雑さ(Complexity)により、3つの種類に
分類されます。
Complexity:複雑さ |
コーデックの種類 |
PVDM4
Credit
|
Low Complexity |
G.711, Fax Passthrough, Modem Passthrough, and Clear-Channel |
15 |
Medium Complexity |
G.726, G.729A, G.729AB, G.722, and T.38 Fax Relay |
20 |
High Complexity Codecs |
G.729, G.729B, G.723, G.728, iLBC, GSM-AMR, T.38 SG3 Fax, and Modem Relay |
30 |
1コールの処理に必要な処理能力は、Low < Medium < High Complexity の順で、
PVDM4 の場合のCreditはそれぞれ Low(15)、Medium(20)、High(30) になります。
2.DSPのコーデック Complexityの設定
DSPがどのComplexityのコーデックを処理するかは、Voice GWのコマンドで設定します。
ISR4K(config)#voice-card 0/1 ISR4K(config-voicecard)#codec complexity ? flex Set codec complexity Flex. Flex complexity, higher call density. high Set codec complexity high. High complexity, lower call density. medium Set codec complexity medium. Mid range complexity and call density. secure Set codec complexity secure. ISR4K(config-voicecard)# |
Highを選んだ場合、ComplexityがHigh以下の全てのコーデックを処理できますが、
全てのコールでCreditが30使用されます。
Mediumを選んだ場合、ComplexityがMedium 以下の全てのコーデックを処理できますが、
全てのコールでCreditが20使用されます。
Flex(デフォルト)を選んだ場合、使用されるCreritは実際のコーデックの種類に依存
します。
3.PVDM4の種類と処理能力について
PVDM4の処理能力(処理可能はCredit数)は下図の通りモジュールのタイプにより異なります。

処理可能な Credit数 が960のDSPの場合、処理できるコール数は下図の通り、
Voice GW のコーデック Complexity設定、実際のコールのコーデックの種類によって
変わります。

Flex complexityの設定では、DSPあたり処理できるチャンネル数が変動するため、
設計上、注意する必要があります。
まとめ
Voice GWを設計する場合、処理が必要なコーデック、コール数を考慮し、DSPモジュールを選択します。
実際の設計では、上記の音声接続用のコーデックに加え、会議、トランスコーディング等の
IPベースの音声サービスに利用するリソースも考慮します。
Ciscoでは、リソースの計算を行うためのツール(DSP Calculator)を提供しています。
以上