1. Overview
シスコルータでのISDN DDR (DDR :ダイヤルオンデマンドルーティング)接続において、筐体、ソフトウェアアップグレード後にダイヤルアップ接続が動作しなくなった、ダイヤルアップにおける特定の機能が使えなくなった等の報告が挙がっております。
シスコルータでのISDNダイヤルアップでは、ダイヤラプロファイルおよびレガシーDDR (dialer maps and dialer rotary-groups)の設定による接続方式がありますが、シスコでは、12.1以降、ダイヤラプロファイルの接続方式を推奨しております。一方、レガシーDDRの接続方式では以下に述べる理由によりダイヤラプロファイルでは起きない問題が発生する可能性があります。
レガシーDDR の設定では、圧縮、アイドルタイムアウト、レイヤ 3アドレッシング、またはその他のサービス機能など、ユーザ間で異なる機能を適用することが実現できないことなどの複数の既知制限があったことにより、ダイヤラプロファイルを推奨後、レガシーDDR での開発、ソフトウェア不具合の改修等が実施されていないことが、背景としてあります。
2. ダイヤラプロファイルとレガシーDDR の設定について
2-1. ダイヤラプロファイルの設定 (推奨設定)
ダイヤラ プロファイルを使用した ISDN DDR の設定
2-1. レガシーDDRの設定 (非推奨設定)
3. レガシーDDR 設定による接続不可事例
3-1. peer default ip addressによるIPアドレスの払い出しを受ける場合
レガシーDDR を使用し、リモートピアからIPアドレスの払い出しを受ける場合、IPCP Negotiation がうまくいかず、接続ができない場合があります。
試験構成
* peer default ip addressによりIPアドレスの払い出しを受けた場合
R1において、NCPフェーズ(IPCPフェーズ)において、CONFACKが返って来ず、CONFNAKを受け取ることにより、IPCPがOpenとならず、通信ができない状況となります。
受信した設定オプションが認識可能および許容可能であるものの、いくつかの値が許容不可能である場合は、ルータから CONFNAK メッセージが送信されます。
08:19:12.367: Se1/0:22 IPCP: O CONFACK [REQsent] id 1 len 10
08:19:12.371: Se1/0:22 IPCP: I CONFNAK [ACKsent] id 1 len 10
08:19:12.371: Se1/0:22 IPCP: Address 10.0.0.2 (0x03060A000002)
08:19:12.371: Se1/0:22 IPCP: O CONFREQ [ACKsent] id 2 len 10
08:19:12.371: Se1/0:22 IPCP: Address 10.0.0.2 (0x03060A000002)
08:19:12.371: Se1/0:22 IPCP: Event[Receive ConfNak/Rej] State[ACKsent to ACKsent]
08:19:12.400: Se1/0:22 DDR: dialer protocol up.
08:19:14.276: Di1 DDR: ip (s=1.1.1.1, d=10.0.0.1), 100 bytes, outgoing interesting (ip PERMIT)
08:19:14.276: Se1/0:22 PPP: Outbound ip packet dropped, NCP not negotiated.
*ダイヤラプロファイル、およびレガシーDDRで IPアドレスを固定設定した場合
下記は、ダイヤラプロファイルを設定した場合、R1のDialer 1に"ip address 10.0.0.1 255.255.255.0"を設定した場合 の出力となっています。CONFACK を受け取り、IPCP open、ルートがインストールされていることが確認できます。
08:30:56.793: Se1/0:22 IPCP: O CONFACK [REQsent] id 1 len 10
08:30:56.793: Se1/0:22 IPCP: I CONFACK [ACKsent] id 1 len 10
08:30:56.793: Se1/0:22 IPCP: Address 10.0.0.2 (0x03060A000002)
08:30:56.793: Se1/0:22 IPCP: Event[Receive ConfAck] State[ACKsent to Open]
08:30:56.816: Se1/0:22 IPCP: State is Open
08:30:56.817: Di1 Added to neighbor route AVL tree: topoid 0, address 10.0.0.1
08:30:56.817: Di1 IPCP: Install route to 10.0.0.1
4. まとめ
筐体リプレイスメント、ソフトウェアアップ グレードの際、前のコンフィグで問題がなかったことにより、そのままレガシーDDRが使用されるケースが多くあります。使用状況、設定等により症状が異なることが考えられますが、上記、事例以外にも、接続ができなくなった、特定の機能が使えなくなった、遅延等が起こる可能性があります。
動作がおかしいと思ったら、切り分けとしてダイヤラプロファイルのDDR 設定に変えてみて、問題が改善するかご確認ください。
また、レガシーDDRでしか実現できない機能はなく、ダイヤラプロファイルへの設定変更も一意に出来ますので、現状、レガシーDDRが使われているようでしたら、ダイヤラプロファイルに変更することを推奨します。