本ドキュメントは、Cisco Unified Communications Manager (Unified CM) における通話保護 (Call Preservation) 機能について紹介します。
通話保護 (Call Preservation)
Unified CM は、通話保護機能をサポートしています。通話保護機能は、Unified CM を介した通話中に Unified CM に障害が発生した場合もしくは Unified CM と IP Phone などのデバイスとの間の通信に障害が発生した場合において、通話中の状態を維持しようとする機能となります。デバイスが障害を検出し、通話保護モードに移行した場合は、デバイスはディスプレイ上に「通話保護モード (Call Preservation) 」と表示します。

通話保護モードの制限事項
通話保護モードに移行したデバイスは、Unified CM とのシグナリングセッションが既に切れているため、保留・転送などの通話サービスを利用することができません。また、デバイスが通話サービスの利用中に通話保護モードに移行した場合は、デバイスの通話を継続することが難しいと判断され、通話が切断される場合があります。
通話保護モードはあくまでも障害時のベストエフォートでの対応となるため、必ずしも通話の継続性を保証するものではありません。
通話保護モードの検出
Unified CM と接続している IP Phone などのラインデバイスは、通話中に以下のような事象を検出すると通話保護モードに移行します。
- REGISTER のキープアライブが失敗
- Unified CM との間の SIP の TCP セッションがリセットされる
- Unified CM からピアが通話保護モードに移行したことを知らせる通知 (SIP NOTIFY) を受信
以下のフローは、IP Phone 1 と IP Phone 2 が Unified CM を介して通話している間に、IP Phone 1 と Unified CM 間のネットワークに障害が発生した例となります。IP Phone 1 からの REGISTER キープアライブが失敗し、IP Phone 1 は通話保護モードに移行します。Unified CM は IP Phone 1 の REGISTER のタイムアウトを検出すると、IP Phone 2 に通話保護モードに移行するための SIP NOTIFY (ボディ部に action=call-preservation を付与) を送信します。その後 BYE を送信して SIP シグナリングを切断します。IP Phone 2 は通話保護モードに移行し、通話を継続します。

REGISTER キープアライブの間隔を小さくすれば通話保護モードに移行するまでの時間短縮が期待できますが、IP Phone の台数が多い場合 Unified CM への負荷が増大します。デフォルト値から変更する場合は Unified CM の CPU 使用率などをモニターして十分に検討してください。IP Phone の場合、REGISTER のデフォルトタイムアウトは 120 秒 (Unified CM のサービスパラメータの SIP Station KeepAlive Interval で変更可能) です。パラメータの詳細は以下のドキュメントを参照してください。
通話保護をサポートするデバイスおよびアプリケーション
サポート
以下のデバイスおよびアプリケーションは通話保護をサポートします。
- Cisco Unified IP Phone
- SIP トランク
- ソフトウェア会議ブリッジ
- ソフトウェア MTP
- ハードウェア会議ブリッジ(Cisco Catalyst 6000 8 ポート音声 E1/T1 およびサービス モジュール、Cisco Catalyst 4000 アクセス ゲートウェイ モジュール)
- トランスコーダ(Cisco Catalyst 6000 8 ポート音声 E1/T1 およびサービス モジュール、Cisco Catalyst 4000 アクセス ゲートウェイ モジュール)
- 非 IOS MGCP ゲートウェイ(Catalyst 6000 24 ポート FXS アナログ インターフェイス モジュール、Cisco DT24+、Cisco DE30+、Cisco VG200)
- Cisco IOS H.323 ゲートウェイ(Cisco 2800 シリーズ、Cisco 3800 シリーズなど)
- Cisco IOS MGCP ゲートウェイ(Cisco VG200、Catalyst 4000 アクセス ゲートウェイ モジュール、Cisco 2620、Cisco 3620、Cisco 3640、Cisco 3660、Cisco 3810)
- Cisco VG248 Analog Phone ゲートウェイ
未サポート
以下のデバイスおよびアプリケーションは通話保護モードをサポートしていません。
- アナンシエータ
- NetMeeting などの H.323 エンドポイントやサードパーティの H.323 エンドポイント
- CTI アプリケーション
- TAPI アプリケーション
- JTAPI アプリケーション
SIP Call Preservation Expires Timer
Unified CM 11.5 より SIP Call Preservation Expires Timer がサービスパラメータに追加されました。このタイマーは、通話保護モードに移行してから通話を切断するまでの時間を設定できます。デフォルト値は 0 (切断しない) となり、0 〜 86400 秒 (1 日) の範囲で設定できます。
参考情報